直近の「森のなかの花」は、水を含んだ越前和紙にインクを垂らすところから制作が始まる。展示室右側の壁に計63点が展示されている。  インクを垂らした後に木炭、パステルなどで描きこまれるドローイングは、広大な無意識=森の上に浮かび上がる意識=花だ。タイトルは作品群の制作中に決まったというが、基調色の緑と黄色、そして黒色から、鑑賞者は奥深い森に差し込む陽光と陰影を想起する。 

12月下旬に同館で開かれた平野雅彦同大特任教授との対談で、白井さんは「風の音に尺八の演奏を絡ませていく。そんなことをしているのかな」と自身の作品に対する姿勢を説明していた。4つのシリーズは、いずれも言葉以前の未分化な蠢きを触知しようとしている。意識と無意識、作者と作品、自己と他者の境界を通り抜け、往還し続けていく。日常と無意識の往還は、山にこもる杣人、あるいは、海に潜る海士の精神に近いのかもしれない。  だからこそトークイベントの副題が「作家として⇆作家を超えて」なのだろう。

白井さんは、美術家であると同時に教育者、キュレーターでもある。「絵筆は身体の一部であると同時に、制御の効かないもの」という本人の考え方こそ、作家としての芸術に対する姿勢のみならず、教育者/キュレーターとしての他者に対する態度も示しているように感じた。(DARA DA MONDE/小林稔和)

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