ただ、そこからは強い作家性が醸し出されている。組み立てるという手作業の営為に対する慈しみが、作品の温もりとなっているからだろうか。とりわけ、端に散らばっている断片からは儚さがにじみ出ている。  「シャーベットのように」は「フリージグソーパズル」の発展系となったシリーズだ。パズルの組み合わせに凹凸のあるパルプを組み込んで、平面のみならず空間にも照射を広げている。「シャーベット」というシリーズタイトルには固体と流体の中間という意味が込められている。作品を鑑賞していると「ふわふわしている」「おいしそう」という身体に直接響く生理的なフレーズが脳裏に浮かんでくる。 

モノクロームの版画作品群「版によるドローイング」は、上記2シリーズと一線を画し、研ぎ澄まされたソリッドな印象を観るものに与える。同シリーズのキーワードは「拭く」。何も刻まれていない銅板に油性インクを塗り、拭き取る。その拭きムラが模様を生み出す。制作は、銅版画同様、版面に黒インクを均質につけることから始める。白井さんは「インクを塗り、それを写す。ただ拭くだけで、絵が現れる。現れてくるものに対する出会いが面白かった」と制作当時を振り返る。全4シリーズの中でモノクロの作品群はひときわ視覚的に異彩を放っているのだが、偶然性を顕現させる手法を、前2シリーズからより先鋭化させたともいえるだろう。 

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