「身体って、すごいことをやってる連中です。『私』なんかよりはるかにすごい」

静岡県袋井市、小笠山の麓にたたずむ「樂土の森」。国際的に著名なダンサーの田中泯さんは、この地で2000年からほぼ毎年、場踊りを舞っている。今年10月28日も雨のそぼ降る夕方、アルミ箔で覆った擁壁、斜面、雑木林を背景にした場と、正対する「樂土の広場」の2箇所で舞った。場踊りの前に、樂土の森で唯一水道の通う施設「みずのいえ」で田中さんからつかの間、話をうかがった。

-樂土の森は、樂土舎代表マツダ・イチロウさんをはじめ、さまざまなアーティストによる手づからの営みが20年の歳月を経て徐々に積み重なった場です。現代アート作品もあれば茶室も舞台も畑もある。電気は通っていない。かつては穴窯もありました。とても混沌としていてかつオリジナルな空間だと思います。同所で継続的に公演されている田中さんにとって、樂土の森の魅力は、どういったところにあるとお考えですか? また出演を続けている理由は?

田中 魅力を魅力にできる人が集う場所だと思います。魅力って謳い文句にはならないですよ。人によって違うはずだし。とにかく続けていることが大事。僕もマツダさんも仲間たちも、なにひとつ保証されていません。固定されているものなんて何もない。地球が回っている限り変わらないものはない。一人一人が生きていて、変わり続けていく。その中で出会っていくわけであって。人間関係に保証や権利があるって考え方はくだらないんですよ。だから、今日ここで何が起こるかってことに夢中になれること、そちらのほうが巨大なんです。それは全く無形ですから。そういう場に出くわすか出くわさないかが、生きてる時間の大事な部分じゃないですかね。毎年一度必ずここに来ることになっていて、毎年見に来てくれる人が必ずいる。僕の変化自体を見届けてもらっている。そういう意味では、ありがたいことですよね。

-樂土舎代表のマツダ・イチロウさんとの出会いのきっかけを教えていただけませんか。

田中 1990年代に掛川市の「開運」で有名な土井酒造場で雨の中踊ったのを見て感動したって話をマツダさんからうかがいました。そこから僕自身に興味を持ってもらった。でも、初めて会った頃はそんなに話もしなかったし、彼が樂土舎で何をやろうとしてるのか全然わからなかった。

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