静岡市内5会場で11月5日まで開催されている「めぐるりアート静岡」。レビュー3回目(最終回)は、静岡県立美術館と静岡市美術館に展示されている池島康輔さんの彫刻と遠藤美香さんの版画をピックアップ。ともに浜松市出身の2人は、どちらも彫刻刀で木を削り、作品を生み出しているという共通点を持っている

池島康輔/静岡県立美術館~時代の接続、ロダン館とのコラボ、質感~

一木造りの木像8体が静岡県立美術館のエントランスや踊り場、ロダン館に展示されている。なかでも白眉はロダン館に置かれた3体の人物像だ。東洋と西洋、木と金属、現代と約100年前という垣根を超えて、池島さんの木像とロダンのブロンズ像群が共鳴しあっている。フランス共和国を擬人化したマリアンヌ(題名は「ラ・フランス」)の横に配置した池島さんの「木花咲耶姫(このはなさくやびめ)」は、現代の女性を象徴する。その一方で日本古来の女神名を冠した作品にふさわしく、ワンピースには実際に桜木をはめ込んだ花弁があしらわれている。武術の達人のようにも見える達磨大師像「ダーマ」の横には同じ角度の前傾姿勢を取っている「ユスターシュ・ド・サン=ピエール」がいる。腰をひねり、知恵の象徴であるフクロウを右腕に乗せた女性像「月喰(げっしょく)」は、虚空の何かを掴もうとしてバランスを危うくしている「永遠の休息の精」の隣に立つ。

「木花咲耶姫(このはなさくやびめ)」(2016、クスノキ、サクラ)。右目と左目をアンバランスにすることで、安直なイメージの喚起を抑制している。左奥はフランス共和国を擬人化したマリアンヌの彫刻像「ラ・フランス」。モデルはロダンの恋人カミーユ・クロデールとされている

「月喰(げっしょく)」(2014年、クスノキ)。手前はロダンの「永遠の休息の精

同じような角度で前傾姿勢を取る達磨大師像「ダーマ」(2010年、クスノキ)=左=と、ロダンの「ユスターシュ・ド・サン=ピエール」

また同館エントランスのホワイトキューブには、イノシシの毛なみと肋骨の凹凸まで浮かび上がらせた「嶮」が展示されている。ヌメっとした質感を表現したタコの作品「賎陋」も、思わず触れたくなるような、あるいは触れたくないような絶妙な仕上がり具合だ。エントランス中央に置かれた「メメント・モリ」は、リア充っぽい若者の肌の質感を、磨かずに刀だけで表現した大作だ(左手は、広隆寺の半跏思惟像のように柔らかく指を結んでいる)。磐田市の屋台の装飾は、一番新しい2017年の作品。明治時代以降のアカデミズムにおける彫刻芸術は、近世までに培われた日本の伝統技術を等閑視したため、断絶があるのだという。担当学芸員の川谷さんによると、池島さんは両者の技術や思想をつなごうと試みていて、屋台彫刻の制作もその一環だという。

イノシシの毛並みや肋骨の凹凸まで表現した「嶮」(2014年、クスノキ)

タコのヌメッとした質感や血管まで表現した「賎陋」(2014年、カヤ)

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