渡辺真也/村上開明堂七間町第2ビル 〜大地の歌を巡る〜

今年から会場となった静岡市葵区七間町の村上開明堂七間町第2ビルでは、沼津市出身のインディペンデントキュレーター/映像作家の渡辺真也さんの映像作品2点を上映している。2作品は、いずれも20〜30分ほどの短編作品で、土地に伝わる古い歌が共通のテーマだ。砂漠=大陸(ユーラシア)と緑=島(ヤポネシア)という自然環境は異なるものの、両作品からは、周縁への眼差しと起源に対する関心、形なきものへの探求心が強く感じられた。

『朝崎郁恵による奄美哀史』

徳之島の島唄のルーツをたどる23分の映像作品。サトウキビの収穫や縁側の猫など、のどかな情景が活写される一方で、薩摩藩の圧政下におかれた島民の哀史を、島唄(奄美民謡)の唄者(うたしゃ)である朝崎さんが、訥々とした三線の音色とともに弾き語る。口承文学の記録映像として、非常に貴重な仕事ではないだろうか。地元の人たちの笑顔がはじける最後のシーンで涙腺が弛む。

『ユーラシアの音楽を探して』

作家が暮らしていたベルリンの路上に置かれた鍵盤楽器の演奏から始まる、33分のロードドキュメンタリームービー。ユーラシア大陸に広がる白鳥伝説の起源を追った『Soul Odyssei-ユーラシアを探して』(2016年)から、音楽をテーマにしたカットを抽出し、再編集している。日本人の遠い祖先が暮らしていたともされるバイカル湖からインスピレーションを得ているというイルクーツクのバンドの演奏が、非常にスペイシーだった。最後は日本の居酒屋の前で、若い日本人女性が「赤とんぼ」を独唱する。「赤とんぼ」を作曲した山田耕作とロシアとの関わりについての解説がとても秀逸。モンゴル民謡のこぶしの回し方に、日本の演歌との共通性を感じた。

『ユーラシアの音楽を探して』の全編バージョン『Soul Odyssei-ユーラシアを探して』が、11月5日午後7時から村上開明堂七間町第2ビルで上演されます。渡辺監督も来場予定です(入場料1000円)。
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