「まち/ひと/とき、/むすぶ」をテーマに静岡市内5会場で11月5日まで開催されている「めるぐりアート静岡」。全会場をめぐり、それぞれの場に新たな光を当てる7作家の魅力的な作品群を3回に分けて紹介します。

奈木和彦/中勘助文学記念館 〜キラキラとドロドロ〜

中勘助文学記念館(静岡市葵区新間)では、藤枝市在住のアーティスト奈木和彦が5作品を展示。「キラキラとドロドロ」が共通テーマの5作品は、いずれも中勘助への熱いオマージュに溢れた新作だ。「中勘助という大きな器にどんな懐石料理を盛り付けるか苦心した」と振り返る奈木さんは、めぐるりアートへの参加依頼を受けてから、3ヶ月中、中勘助の作品を読み込んで共感を重ね、創作に反映させたという。

『匂い菫のたね』

記念館大広間の畳の上に敷かれた紫のサテンの上に、種を模したような銀の粒のかたまりと水溶液の入ったガラス容器のオブジェ13組を配置。対になっている1組のオブジェは勘助と彼が思慕していた義姉を象徴している。中勘助の作品には、義姉とスミレを庭に植えた思い出が記されている。光加減によってサテンの上の淡い影が、刻々と変化していく様子が神々しい。

 

『提婆達多』

縁側に仏塔のように立つ細長い鉄製の鳥かご。真鍮の極めて細い針金が、床から鳥かごの内部に伸びている。作品名の「提婆達多(でーばだった)」は、釈迦の親族だったにもかかわらず袂をわかった弟子で、勘助のエッセイにも登場する。勘助は提婆達多に自身を投影していた。奈木さんは、勘助の療養中の環境を鳥かごに、そして床から伸びた蜘蛛の糸を「救い」として表現している。鳥かごの扉はいずれも開いていた。

『冷たい石』『「星」と「お星様」』

『冷たい石』は、床の間に並んだ白い4皿と黒い1皿で構成されている。膠とオブラートを冷蔵庫に入れ、化学反応によって偶然生じた形状をそのまま作品にした。ヒビの入った白い皿は中勘助と確執のあった兄との関係を象徴。とぐろをまくような黒い一皿は、そのような確執を生み出した残酷な運命そのものを表現している。その上に飾られているのは勘助と兄とのやりとりをモチーフにした『「星」と「お星様」』。玄関に展示されている十字形の作品の切り抜き部分で対になっている。玄関の十字と床の間の切り抜きは、反発しあう兄弟の関係を、反転し合う自我の投影として示しているようにも見える。

『月潮』

勘助が戦前戦中の羽鳥療養中に暮らしていた離れを復元した一室には、実際に使っていた木製デスクと同じ型の鉄製デスクを展示している。銀、黄色、ラメなどの塗料を5回にわたって塗り重ね、幻想的な風合いを醸し出した。雨戸を締め切って室内を暗くすると、ラメが天の川のように煌めく。のみならず、日光が肘掛け窓から差しこむと、机の表面は金色に変わる。


1 2