「cafe the eel」店主はいかにして、パリで絵本作家になったのか?

ブックカフェ兼イベントスペースとして、2000年代に浜松のカウンターカルチャーの一翼を担っていた「cafe the eel(カフェ・ジ・イール)」。店主の前原本光さん(40)は2011年に渡欧し、活動の場をフランスに移した。パリを拠点に、絵本作家、DJ、ミュージシャンとして活躍する前原さんに、現在の活動内容や現地での音楽の受容状況を、帰国のタイミングに合わせてうかがった。

ー イベントのオーガナイザーや、DJ、絵本、詩の創作と多彩なジャンルで活動されてきました。最初に、前原さんのプロフィールを簡単に教えてください。

前原 浜松市西区出身です。父はピアノの設計士で、ジャズミュージシャンでした。だから自然と子どもの頃から、音楽が身近にありましたね。高校を卒業して東京の専門学校で音楽を学んだ後、ロンドンに1年間留学しました。そのときから将来的に海外で仕事をしたいって強く思ってました。

ー JR浜松駅近くの田町にブックカフェ兼イベントスペースの「cafe the eel」を開いたのは?

前原 留学から帰国した2000年です。好きな書籍と音楽、それとイギリス留学中にはまった紅茶を合わせて仕事にしようと。店舗はイベントスペースとして活用し、詩の朗読会や音楽イベント、展覧会を主催してきました。地元の浜松から世界に発信できる事をしていきたいという思いで、店名をイール(ウナギ)にしました。5年という短い期間ながら、一つの文化を築き上げることができたのではと思っています。2005年に店舗をたたんでからも、プロジェクト名として残して、市内の鴨江アートセンターなどを拠点に、イベントを不定期に開催しています。

ー 「cafe the eel」は今も継続しているんですか?

前原 はい。今も帰国した際に、フランスで購入した書籍の販売会などを「eel books」名義で開いたり、「cafe the eel」名義で期間限定カフェなどしています。

ー 絵本を中心に約10冊の著書がスイスと韓国の版元から発売されています。どういう経緯で海外の出版社と契約に至ったんでしょうか?

前原 あまり国内国外にこだわりはなかったんです。ただ、日本の出版社って、営業担当部署の連絡先はHPに記載されていても、編集部の窓口にはなかなかつながらない。でも海外だと編集部のアドレスがHPにダイレクトに載っているんです。それで、自分がいいなと思った出版社のアドレスに、「出版したい」というメールを直接送りました。以前から海外の音楽レーベルに自分のデモテープを売り込んでいたので、そういったやり方に馴染んでいたこともあります。そうしたら、スイスの出版社から連絡があって、ちょっと時間はかかりましたが、「A/Z L’alphabet du livre en main」の出版につながりました。

2013年に出版されたアートブック「「A/Z L’alpjabet du livre en main」を手にする前原本光さん(浜松市中区の鴨江アートセンター)

 

ー 2013年10月に発売された「A/Z L’alphabet du livre en main」は、文庫本を片手で曲げてアルファベットの形にしたものを、1文字づつ撮影したアートブックです。切り取れば、ポストカードにもなりますし、発想がとてもユニークですよね。どんな経緯で生まれたんでしょうか?

前原 遠州鉄道の第一通り駅近くに「naru」ってお蕎麦屋さんがありますよね。お店に併設されているギャラリーで、2011年にグループ展を開いたんです。そのときに企画した作品がきっかけになりました。展示会をやってみて、これは本にできるなと。

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