今回の展示作品数は、約150点。1枚絵や立体作品、そして、作家活動の軸である、これまでに発表した6冊の絵本すべての原画がそろっている。「絵本は幅広いと思います。わーっと激しく動いた後、しーんと静かになるような、1枚絵では不可能な映像的な表現もできる。ページをめくる行為によって、スピードや強弱を変えられるところも、絵本の可能性だと思う。これからも『絵本だからできるんや』という世界を探し続けたい」(ミロコさん)

これまでに出版した絵本全6作の原画がそろう。写真は「ぼくのふとんは うみでできている」と、「地球を見ちゃった」と本人が振り返る「つちたち」(2015年、学研プラス)など

 

自身が絵を書いているときに着ていた服などをまとった人形たち。このコーナーと植物の断面図を描いた作品周辺に、静謐さが宿る

 

作家にとってもっとも近しい生き物である猫の作品ももちろん多い。ミロコさんによると、目の前にいる一匹一匹を描いてきたのだそうだ。確かに展示作品で描かれる一緒に暮らしていたてつぞうや近所の猫たちは、ふてぶてしかったり、意地悪そうだったり、ヤンチャそうだったり、概念的ではなく、より個々の性格に即した表情で描かれている。

「庭の声」というコーナーには、ミロコさんが普段散歩する自宅近郊を地図にして、猫の置物を置いている異色の立体作品がある。シンプルなのだが、作品を目の前にすると、想像力次第で物語がどんどん膨らんでくる。「今日しか会えないその姿を、明日には変わってしまうその形をわたしは絵に描きたくなる」と、そのコーナーの作品紹介パネルには記されている。ミロコさんが生き物や場との一期一会の出会いを、作品に昇華するまでの思索の手順が、この立体作品には詰まっている。

 

「毎日散歩を続けると出会う猫のラインナップが変わる。子猫はあっという間におとなの猫に成長する。今しか会えない姿を絵に残したい」(ミロコさん)

 

8月には7作目となる新作絵本が出版される。瞬間の空気の振動を、画面のすみずみまで充満させる強固な意志は不変だ。書店に並べば、その本が、すぐにミロコマチコの作品だとわかるはず。間違いなく手に取ってしまうだろう。

(取材日 2017年7月8日/文責・小林稔和)

 

〜関連情報〜
「ミロコマチコ いきものたちの音がきこえる」
期間 7月8日〜9月3日
会場 佐野美術館 静岡県三島市中田町1-43
主催 佐野美術館、三島市、三島市教育委員会、毎日新聞社、Daiichi-TV
問い合わせ先 (電)055-975-7278

【ミロコマチコさんサイン会】
7月22日午後3時半〜午後4時半
※サイン会当日にミロコマチコさんの著作を佐野美術館で購入すると、本人にサインをもらえます。

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