− 外野の素人がいうのも失礼ですが、プレッシャーが尋常ではないのでは?

宮城 非ヨーロッパ圏の演劇界を背負っているようなものですから…、当然あります。最初は気が重くて「勝ち」ではなく「引き分け」に持ち込むつもりだったし、正直、ここまで大きなビッグマッチが用意されなくても良かったとさえ思いました(笑)。

− 『マハーバーラタ』のときは、チャレンジャーだったんですね。

宮城 はい。でも、昨年の演劇祭で法王庁の見学を兼ねてアヴィニョンを訪れた時、「何か一言ここでものを申したい」という感情がふつふつと湧き上がってきたんです。そして「ここなら『アンティゴネ』だろう」とその場で閃いた。すぐに日本にいる舞台監督と美術監督に電話して、下見に来るように要請しました。「飛行機代は僕が自腹で払うから」って。

− 法王庁は、1309年のアヴィニョン捕囚開始から1417年のコンスタンツ公会議まで、中断はあるものの教皇(法王)が居住し、キリスト教世界の中心だった場所です。その場所の何が宮城さんをかり立てたんでしょうか。

宮城 法王庁は決して「遺跡」じゃありません。今現在に続く力が冷凍保存されている場です。今日の世界を覆っている二元論的な価値観、争いの構図が凝縮されている場、西洋の権力が形象化されている場です。そこで、東洋の端っこの島国の地方劇団がオープニングを演じる。こんなチャンス、ぜったい無にできない。非ヨーロッパ言語のオープニングアクトは演劇祭において初めてです。新しい扉が開いたのだから、観客が「えっ!?」って思うものを、きちんと提示しなくてはいけない。古代ギリシアの劇作家ソポクレスの原典を踏まえ、ギリシア悲劇の原点に則りつつ、一神教にとって物議をかもす寓意を込めています。ギリシア悲劇なのに、そもそも冒頭から仏教の僧侶が登場するんだから、現地の演劇ファンもきっと驚くんじゃないかな。

アンティゴネの叔父であるクレオン王を演じる俳優の大高浩一

 

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