融け合う色彩、救いとしての光と写真

The exceeding brightness of early sun
Makes me conceive how dark I have became

この早春の陽射しの 異様な眩しさは悟らせる、
自分が どんなに暗くなっていたのかを。

And re-illuminates things that used to turn
To gold in broadest blue, and be a part

そして再び明るく照らす、かつて大空の青の下で金色に変化した物たちを、
変化する自分の精神の一部をなしていたものたちを。

(ウォレス・スティーヴンス作、小口未散訳「三月の陽差し」より抜粋)

 

「The May Sun」より。異世界につながるような小道。クレマチスの丘で撮影された。中央に浮かぶ明るい緑の丸は木の葉だ。

 

長泉町のIZU PHOTO MUSEUMで開催されている写真家テリ・ワイフェンバックの個展タイトルは、作家が敬愛する同国出身の詩人ウォレス・スティーヴンス(1879ー1955)の詩「The March This Sun(三月の陽射し)」に由来している。展示作品数は約110点。5つの部屋に分かれた展示場に、それぞれ制作時期や製作手法の異なる作品がテーマ別に飾られている。作家が2015年5月にIZU PHOTO MUSEUMに長期滞在して撮影した、展覧会名と同タイトルの写真群は2番目の部屋に並ぶ。

見逃しがちな風景が、絵筆で色を置いていくような色彩感覚で次々と切り取られている。「ディファレンシャル・フォーカシング」と呼ばれる手法を用いて、「ぼかし」を効果的に使った印象派を想起させる作風は、鑑賞者を長い間、作品の前に立ち止まらせる。
たとえば、2番目の部屋の入ってすぐ右手にある作品。雨に濡れたほの暗い小道は、中央がスポットライトを浴びたように明るい緑に塗られている。この緑、実のところ蜘蛛の糸にひっかかり、空中に浮かんだ葉っぱだ。ぼかしが強いため、鑑賞者はそれが葉だとすぐに気づかない。また、黄色いキソケイの花の作品は、灰色の背景に赤やクリーム色の「にじみ」が点在している。種明かしをすると、濃い霧と背後にいる人物のレインコートの色が浮かんでいるのだという。ワイフェンバックの作品は、写っている何かを確かめるというより、彼女の色彩遊びに導かれながら、イメージを堪能するところに面白さがある。作者自身も、撮影行為によって、現実を観察しながら空想の世界に遊んでいる。個が融解しながら全体に繋がる、というような世界観を表しているようにも読み取れる。

「The May Sun」の作品群より。手前のキソケイの枝の背後に、色の異なるレインコートを着た2人の人物がにじんだように写っている。© Terri Weifenbach

 

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